昨年、京都大学免疫学の本庶 佑名誉教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。誠におめでたいことです。
TVのインタビューに答えて、「教科書を信じてはいけない」という趣旨の発言がありました。
私も若い時に免疫学(免疫遺伝学)を学んだのですが、最初は(今も)何もわからず、日本語で書かれた、本庶先生をはじめ日本を代表する免疫学者らの執筆、監修(つまり助手や院生が執筆)した本はもちろん、英語で書かれた教科書(更新が速い)は、研究室には一冊しかなく上級生が持っていくのかすぐ無くなり、バイトで貯めたなけなしのお金で買って読みました。
その当時、どの教科書にも当然のように書かれていた現象が、数年後には完全に削除されました。実験の方法そのものが間違いだったということです。研究室の先輩たちが、そのことと関連した論文を一流雑誌に投稿しても、「お前は頭がおかしいんじゃないか?」とのコメントとともに、reject<掲載拒否>されて、追加実験をして、あるいは、考察を書き直して、他誌に投稿してaccept<掲載受諾>になり、大学院が修了になるか、退学になるか、あるいは留年(臨床教室の人事上実際はほぼ不可能)するか、がかかっていて、苦労していたのは言うまでもありません(大学院には「卒業」はありません)。
それでも私が臨床に戻っても、まだ耳鼻科の学会では信じている人がいて、堂々と実験結果を発表、論文を掲載(まともな審査員がいない)していることに驚きました。